小泉花恋振り返り1:カバー曲のセレクト

小泉花恋の振り返り連載、第一弾です。卒業発表についてのコメントはこちら。本来なら卒業前に書くべきだったものですが、やることが多すぎて優先順位が下がってしまい、今になってしまいました…。ダメだなぁ。


小泉花恋というアイドルの話をするとき、最初にしなくてはならないのが、私たちがどう出会ったかです。私はアイドルプロデューサーになりたくてオーディションを行ったわけではありません。小泉花恋は私の年上の友人の姪で、ソロになる前に所属していたグループ加入前に「姪がアイドルを始めるけど、全く経験がないから色々教えてほしい」と言われて紹介されたのが出会いです。


メジャーアイドルグループからの信頼も厚いヘアメイクの友人を招いてメイクレッスンをしたり、ポージングレッスンや、スタジオ撮影をしてみて、表情やポージングでの見え方の比較をしたり、「握手は相手の目を見てしっかり握るんだよ」みたいな、10年以上ドルヲタをやっているからこそわかる人気が出る子の特徴を、初歩的な内容から順を追って話したりもしました。


もともとアイドルが好きな子なので飲み込みは早く、満を持してデビューしたのですが、残念ながら彼女が所属していたグループは活動開始から1年弱で活動休止。「私、アイドルを続けたいんです」と連絡があったので、「じゃ、どこか決まるまでソロで活動したら?」と応えたのがプロデュースのきっかけでした。


私も長年自分のマネージメントと並行して文化人のマネージメントはやっていたのですが、アイドルのマネージメントは初めてというただのドルヲタで、ライブに出るためのツテもなく、何から始めたら良いものやらさっぱりだったので、とりあえずコンセプトとファンのペルソナを決めて、出来合いの衣装を2着と靴を買って、アー写を撮って、ホームページを作るところから始めました。

これが最初に買った衣装のうちひとつ。頭のパンダは得意の羊毛フェルトでチクチク作りました。


流れで始まったプロジェクトだったので、最初からソロアイドルとして活動したかったわけではありません。高校が終わるまで、つまり半年以内にどこかグループに加入することを想定していたので、オリジナル曲を作らず、カバーから始めました。


初期のカバー曲のなかでも、しっくりきたのがこの2曲。

・ロマンティックあげるよ/橋本潮 ※「ドラゴンボール」ED曲
・ラムのラブソング/松谷祐子 ※「うる星やつら」OP曲


ソロを始めた当初は歌唱力が致命的に低かったので、音の動きがゆるやかで、30代〜40代ならみんなが口ずさめ、かつ懐かしくてキュンとくる、昭和アニメ曲には助けられました。結局みんな、自分が知ってる曲が好きなんです。さらに知っている曲なら、脳内で音程を補完するので、少々外れていようが脳内オートチューンで正しく聞こえたりもします。


昭和のアニメ曲を選んだのにはほかにも理由があります。まずはファンを30代〜40代のおっとりとした男性にターゲッティングしたこと。恋愛感情でアイドルを見てしまうと、自分の思い通りにいかないことをアイドルのせいにして批判したり、わざとアイドルを試すようなことをしたり、後ろ足で砂を掛けるような言動で離れていったりする人も決して少なくなく、アイドルが疲弊してしまいます。


酷い話、グループならメンバーが1人抜けても存続可能なことが多いですが、ソロはその子が病んでしまったら終わりです。まずはガチ恋のファンよりも、父性愛で見守ってくれるようなファンを中心に獲得しようと考えました(ガチ恋が悪いと言ってるわけじゃないよ!)。


この時よく言っていたのが「この方法だと、いきなりブレイクすることはないけど、良質なファンが着実に付いていくから、絶対に焦らないで」です。ファンが増えない苦しさはあったと思いますが、この時の頑張りが、後の私が小泉花恋プロジェクトの中で最も誇りに思っているふぁんふぁんへとつながっていきます。


カバー曲セレクトのもうひとつの条件が他のアイドルがカバーしていない曲であること。2015年のいわゆる地底業界は、多くのグループが

・初恋サイダー/Buono!
・nerve/BiS
・君の知らない物語/supercell
・金曜日のおはよう/HoneyWorks

を、地下ヲタが好きな曲で盛り上がるからという、楽曲の背景や元の歌手へのリスペクトなくカバーしているところが多い印象でした。1回の対バンライブで初恋サイダーが10回以上流れることもザラ。私がハロヲタで研究員でもあったので、特にうるさがたになっていたとは思うのですが、やはり愛がない短絡的なカバーは避けたいと思いました。


定番曲をカバーすれば、一気にファンが増えてスタートダッシュができることはわかっていましたが、よそのグループと同じ曲で戦えば、より良いパフォーマンスのグループや、圧倒的なビジュアルを持つグループが現れたら、ファンがそちらに心惹かれて他界してしまうのが目に見えています。


なので、「小泉花恋にしかない価値」を生み出すことを最優先事項に考え、昭和のアニソンから幅を広げつつも、

・他のグループがやらない
・30代40代男性がキュンとくる
・小泉花恋をかわいく見せる曲

を探しました。そうなるとソロアイドルの楽曲が親和性が高く、

・MajiでKoiする5秒前/広末涼子
・愛してね♥もっと/嘉陽愛子

の2曲は、思春期の女の子が歌うのにぴったりな世界観で、初恋や恋愛のドキドキ感が本人のキャラクターとも相まってオーディエンスに伝わりやすかったのか、特典会に初めていらした方が「かわいい子がいるなって思った」とおっしゃることが多かったです。


そしてその後から少しずつ、楽曲派にリーチできるようなカバー曲を増やしていきました。

・地獄先生/相対性理論
・カプチーノ/ともさかりえ
・美しく燃える森/東京スカパラダイスオーケストラ

これらの曲をやると、「こんな曲カバーしてる子がいるんだ!ってびっくりした!」と言って興味を持ってくださる楽曲派のファンが付きました。私自身が楽曲派かつパフォーマンス厨で振りコピするアイドルヲタクなので、楽曲派に認めてもらえることは素直に嬉しかったです。


この時期くらいからアイドルとしての規模が拡大し、地底を脱することができたと思います。この少し前にオリジナル曲の制作もしていますが、それはまた後日に。